大腸がん手術から1日後(歩行訓練の巻)

運動は癒着を防ぐ

HCUに入って二日目。

前日の夜に痛み止めを打ってもらったおかげでぐっすり眠ることが出来ました。

私の主治医はO先生ですが、担当医のT先生はよく私の様子を見に来てくれて色々心配して下さいました。

T先生は、私の手術をして下さった先生方のなかで一番若い先生でした。

たぶん私と年はあまり変わらないと思いますし、ほかの3人の医師から私の離れているところで色々助言を受けていたので(単なる印象ですが)4人の先生の中で一番経験が浅そうでした。

でも、T先生は未熟さをカバーする「慎重さ」がありました。

多分私の手術はあまり難易度の高くない手術だったのでしょう。

3人の先生方には余裕がみられましたが、T先生だけは暇をみて何度も私のベッドの元を尋ねてきて下さいました。

医者に1番必要な資質ってなんだろうかを考えてみた。

T先生:「新里さん、調子はどうですか?」

私:「はい、昨日の夜に飲んだ痛み止めのおかげで痛みは治まりました。」

T先生:「そうですか、それは良かったです(^^)。 新里さん、今日の昼ぐらいから歩いてもらいます。痛いかもしれないですが、早く歩いた方がお腹の傷の治りが早くなりますので・・。」

私:「(マジ?)分かりました。頑張ります」

T先生:「たくさん歩けるようになれば、尿の管は必要ありませんのでとリますから、それを目指して頑張って下さい」

その一言が私をやる気にさせました。

一刻も早く、あちこち繋がれた管から開放されたかったんです。

(まずは尿の管の撤去を目指そう!)

痛み止めの効果は切れていましたが、安静にしていたので痛みはありませんでした。

昼担当の看護師さんにお願いして、さっそく歩いてみる。

おっ? 歩ける!

2日間ずっと横たわってたせいか、バランス感覚がなんかおかしいのですが(汗)、ちゃんと歩けました。

HCUの室内を看護師の支えナシで4~5周くらい歩いたところで、周りの看護師さんがびっくりしていました。

大腸がん手術の次の日で歩行訓練に入るのがセオリーだそうですが、こんなにサクサク歩く人は見た事がないようです。

もともと体は鍛えていましたし、ガンが発覚するちょっと前までは普通に1時間くらいジョギングしていましたので、ほかの患者さんと比べたら体力はある方だと思います。

周りの看護師さんや、ほかにベッドで寝ている患者さんも「スゲ~」みたいな目で見ていました。

そこで私は調子にのってしまいました。

それから何十周も室内を歩いたのです。

どうだ、これで管をとれるだろう?( ̄ー ̄)ニヤリッ 

歩けたとはいえ、今まで毎日ジョギングをこなしていた私にとって、歩くだけで少し疲労感があったことにはちょっと屈辱でしたが、これで管がとれると思うとうれしかったです。

看護師A:「術後1日でこんなに歩ける人は初めてみましたよ^^ T先生に管をとっていいか聞いてみましょうね^^」

私:「はい、お願いします ( ̄ー ̄)ニヤリッ」

でもね、やっぱり調子にのって無理したのがたたったのか、しばらくして猛烈な痛みが!

それもあって、この日で尿の管が抜けることはありませんでした。

まあ、仕方ありません。今日の教訓は調子にのるなです(笑)。

で、昼過ぎからはずっと身動きもせず安静にしてました。

痛みは少しは治まりましたが、それでもまだ強烈な痛みには変わりありませんでした。

昼勤の担当の看護師さんが、引継ぎの為に私の腹を触診しました。

看護師A:「あれっ? ちょっと腫れてるかな」

私:「へ?」

看護師A:「ちょっと腫れてるみたい」

Aさんの顔が曇ってきた。

明らかにまずそうな顔をしている。

ちょうどその時に担当医のT先生が診に来てくれました。

AさんがT先生に私のお腹をチェックしてくれるよう頼んでいる。

看護師A:「T先生、あの~、新里さんの腹が少し化膿してきているかもしれません」

T先生が私のお腹を触診してみる。

T先生の顔色が変わった。

(あの時調子にのって歩いたせいだ。なんてバカな事を(´Д`) )

T先生:「手術後はこれくらいは腫れますので大丈夫だとは思いますが、一応今夜は抗生物質を打っておきましょう。それで明日は念の為レントゲンをとってみましょうね。」

(もー、お二人ともその顔やめなよ (*_*) )

T先生はHCUを後にしました。

それからいっそう不安になりました。

(そうだ!免疫力をあげなきゃ、今はまったく寒くないけど暖房フトンを頼もう)

それで全身汗だくになった。

昼勤の看護師Aさんから、いかにもベテランそうな看護師Bさんが夜勤担当になった。

AさんからBさんへ手術跡の腫れのことを告げられる。

Bさんが私の腹を触診してみる。

看護師B「大丈夫だと思いますよ^^ 手術直後はこれくらいは腫れると思いますので・・・、それより新里さん、汗だくじゃないですか、、寒いんですか?」

私は化膿が怖くて、今一生懸命体温を上げて免疫力を高めているんだ、と話しました。

Bさんはちょっと笑っていた。

看護師B「手術直後だから、やっぱり心配ですよね。でも今新里さんは絶飲食ですし、そのうえで汗だくになっちゃ脱水症状になっちゃいます。体力奪われちゃいますよ。心配しないでも大丈夫ですよ^^ このフトンは片付けときますね。」

確かに・・・。納得いく説明でした。

ベッドで横たわりながらHCU内の看護師さん同士の会話に耳をすましていると、Bさんは色々な方にアドバイスをしているようでした。

HCUではどうやら1人の看護師に対して2人、ないし3人の患者さんを担当するみたいでしたが、Bさんは様々な患者さんや、患者さんを担当する看護師にアドバイスをしていました。一番頼りになりそうな看護士は、Bさんだと思いました。

Bさんの言うとおり、この腫れはなんでもなかったことが後で分かるのですが、今になって振り返ってみると、「臆病さ、慎重さというのも、医者の大事な資質なんじゃないか?」と思うのです

(レントゲンを何回も確認した。異常はない。でも本当に見落としはないのか?)

(手術は順調に進んでいる。でも、術前の検査と変化している部分があるかもしれない・・。術式の変更は必要ないか?)

(患者のQOLを考えると、これが本当に最善なのか?)

(触診してみると、気になる部分がある。詳しい検査が必要ではないのか?)

そのような不安と常に戦っている臆病な医者こそ、優秀な医者のような気がします。T先生には、その資質が備わっていると思いますので、私の担当医になってくれて本当にラッキーだと思います。

一方で、O先生やベテラン看護士のBさんような、経験豊富で「余裕」「安心」が感じられる言葉と態度で患者を勇気付けさせてくれる医療従事者も、立派だと思います。

患者のなかには気持ちで負けてしまって病気と闘う気力がない、あるいは怖がって検査や手術を受けることに躊躇してしまう人も少なからずいらっしゃると思うんです。

そういう場合には、患者を安心させるようなコミュニケーション能力が必要だと思います。

専門知識はあっても、それをうまく患者さんに伝えることが出来ないと、患者さんの心を動かすことは出来ません。このスキルについては医師よりナース(看護士)の方が優れている気がしますね。Bさんは優秀なナースの典型例だと思います。

でもO先生の場合は少し違うんですよね。

「態度」で患者さんに語りかけるというか、「無言」で患者さんを安心させるというか、そういうオーラがあるんですよね。

絶対的な信頼感とでも言いましょうか。それはやはり長年の経験の蓄積から形成されるものだと思うんです。

「臆病さ」と「余裕さ」と「信頼」。この3つが医者に必要な資質だと思います。

「臆病さ」と「余裕さ」というのは、なんか矛盾しているように思うかもしれませんが、全然矛盾していないと思っています。

自信のなさからくる臆病さならば余裕はないかもしれませんが、慎重さからくる臆病さというのは、失敗が少なくなるという意味でこれは自信につながり、「余裕さ」が出てくると思うのです。

そして、「臆病さ」と「余裕さ」を兼ね備えた医師が成功体験(経験)を積み重ねることで、「絶対的な信頼感」という資質が身についてくるんだと思います。

たぶんこの3つの資質を高いレベルで全て兼ね備えた医師はほとんどいないかもしれませんが、最近の医療は「チーム」でやるので、仲間の足りない資質をお互いが補い合うという関係が築けていれば、患者は納得がいく医療行為を受けられると思います。

その意味で、O先生とT先生、それにベテラン看護士のBさん、そして個人的に非常にお世話になった看護士のAさん、そして後に私の主治医となるA先生や他の先生方からなる「チーム」は、お互いの足りないものを補い合っている良い関係なのだと思います。

私は10日程で退院することが出来ましたが、それはひとえに素晴らしい医療チームに巡り合えたからだと思います。感謝! m(_ _)m

その日は、夜に抗生物質と、やはり痛み止めと(苦笑)、胃の荒れを抑える点滴をしてもらって一日が終わりました。

【追記】でも、やっぱりなるべく早く歩いたほうがいい!その理由とは?

運動は癒着を防ぐ

この追記は術後3年後に書いています。今のところ再発の兆候もその他のトラブルもなく、順調に過ごしています。

再発はともかく、腸閉塞や腸捻転などのトラブルが今まで1回もないのは、もしかしたら「あの時に調子にのって無理したのが功を奏したのではないか?」ということが最近分かってきました。

というのも、こんな記事を見つけたんです。

~ (中略) ~

開腹手術経験者の9割に癒着が起こるという説もあるそうで、父にとって癒着の問題は他人事ではありません。

恐ろしいのは、一度癒着してしまったら、剥がすには外科手術しか方法がない、という事実です。そして、一度癒着が起きると、腸閉塞につながる恐れもあります。

実は、私自身にも術後の癒着の経験があります。子宮内膜症で28歳の時と39歳の時に開腹手術を受けているのですが、2度目の手術のときに、開腹してみると、かなりの癒着が見付かりました。

癒着部分を剥がしながら患部を切除するという高度な技術が必要で、手術は長時間に及びました。執刀医に聞いた話では、本来は離れているべき2つの卵巣が、子宮の裏側で絡み合っていたそうです。

それを聞いて、手術前、強烈な腹痛が起こった理由が納得できました。

こうしたやっかいな癒着を防ぐためには、歩くことが一番です。実際、6時間に及ぶ大手術の翌日、集中治療室にいるにもかかわらず、父は歩くように指導を受けました。

面会に行った母と妹が、左右から支えて、ベッドから立ち上がり、一歩ずつ、集中治療室の端から端まで歩く訓練をしたのです。

体につながれたチューブや酸素ボンベを外す準備に約30分、十数メートル歩くだけで10分、と非常に時間がかかりました。

顔色は青く、一歩ごとに肩で息をしている父の姿は、まるで、いじめられている様に感じられます。癒着を防ぐために必要な行程だと知らなければ、関係者に抗議したことでしょう。患者本人も家族も、大手術の後は安静にするものだと思い込んでいましたから。

もちろん、退院してからも、適度な運動は一番の課題でした。術後に積極的に歩くことの重要性を、家族一同で認識し、サポートしていく必要があるのです。

※文字装飾は、管理人による

(出典:術後の体の変化~癒着への不安と「すぐ出る」悩み

私は術後3年間、腹八分でよく噛み、よく水分を摂ることで腸閉塞を防いできたつもりでしたが、おそらく「術後、きっちり歩いたこと」のほうが、要因としては大きかったのかもしれません。

これから開腹手術を受ける予定がある方は、参考になると思います。多少は無理してでも「歩く価値」はあると思います。あっ、でもやり過ぎると私みたいになるのであしからず(^^;

また、腸閉塞にならない為に、私が日常生活で工夫していることや、ちょっとした運動法も別の記事で解説していますので、興味があれば見て下さい。(参考 → 腸閉塞(イレウス)の予防法

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