運動習慣より大切な運動

ただ、これは私の推測なんですが、スポーツよりも「日常的に体を動かすこと」のほうが重要な気がするんです。たとえば、

  • エスカレーターを使わずに階段を使う
  • 炊事洗濯をする
  • 買い物に行く
  • 軽くストレッチをする
  • 部屋の掃除をする
  • 歩く
  • ちょっとした荷物を運ぶ

などなど・・・。こういう「ちょっとしたこと」の積み重ねが、体に好影響を与えていると思うのです。

長寿の秘訣は、ちょこまか体を動かすこと

90歳以上でも全く衰えをしらないようなスーパーご老人達を観察していると、健康の為に運動しようとか、そういうことは全くないんですよね。ただ、自分で出来ることは自分でするだけです。結果的によく体を動かしているんです。

スポーツのような激しい運動をしているわけじゃないんです。
庭の草をむしったり、近所の人とおしゃべりをしたり、そういう「運動ともいえない運動」をしてるんですね。

健康の為にジムに通ったりジョギングしたりしている人は、それが終わったら冷暖房の効いた部屋で、ビールでも飲みながらだら~っとしてるでしょう。

もう疲れきっているんで、体を動かすことはないわけです。

スーパーご老人たちは、朝から晩までちょこまか体を動かしています。運動強度ではジム通いやジョギングをしている人と比べてはるかに劣りますから、たいして疲れません。

しかし、適度に休んだりしながらも終始体をよく動かしていますから、1日の総消費カロリー量においては、健康の為に運動している人と、おそらく大きな差はないと思います。しかも運動強度が低いから、「活性酸素はあまり発生させずに新陳代謝を高めることが出来る」というオマケつきです。

この”ちょこまか”動く運動を「NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)」と呼び、メタボ対策に推奨する学者もいる。日本語では「非運動性活動熱産生」と訳す。

実際NEATは活動による熱産生の大半を占め、意識された運動よりもその割合は大きい。

アメリカの研究では、NEATを増やすことによって内臓脂肪を減らすことが出来ると報告されている。運動する暇のない忙しいビジネスマンには朗報だ。

(出典:姫野友美『成功する人は缶コーヒーを飲まない』講談社+α新書、2011.4.20発行、71頁より引用)

「NEAT」についてはシリーズ前半のほうでも解説しましたね。沖縄県民は運動習慣はあるけれども、この「NEAT」が減っているのだと思います。(※あくまで私の推測ですが・・・。)

沖縄のような亜熱帯地域は、座っているだけで汗をかいてカロリーを消費しますが、実際は冷房の効いた涼しい部屋でほとんどの時間を過ごしています。

現代人は特に体が弱くなっていますから、体温調節機能が低下しています。
その状態で高い気温に長時間晒されると、簡単に熱中症や脱水症状を起こしてしまうので、冷房の効いた部屋にいないと危険なのです。

そして、どこへ行くにも車です。運動以外の身体活動が極端に減っています。
食べる量(カロリー摂取量)が減っていても、身体活動量が圧倒的に減っているので肥満や生活習慣病が蔓延しているのだと私は考えています。

昔の人はよく体を動かしていた

今でこそ沖縄は那覇なんかに行くと、本土の大都市並みに発展していますが、戦前~戦後のある時期までは本土と比べてはるかに遅れていました。父によれば、現在のような車社会どころか、道はほとんどなく、獣道くらいしかなかったそうです。

当時の沖縄は、今で言う「格差社会」で、貧富の差がものすごくあったそうです。
かと言って、地方の有力者(金持ち)は富を独り占めするのではなく、豚を調理して地域の人に分け与えて宴会をやったり、その代わりに地域の人々にさとうきび運びの手伝いを頼んだり、お互いに助け合う良い関係だったそうです。

うちの父の家庭は物凄く貧乏だったそうですが、幸いなことに近くに地元の有力者が住んでいて、その方に気に入られていたのか、よく仕事を頼まれていたそうです。

当時、10歳にも満たなかった父は、その有力者に、「お~い、またさとうきび運び頼むよ^^」と、声をかけられると、後でご馳走がもらえるのでうれしくてたまらなかったそうです。

もちろん軽トラなんかありませんから、さとうきびを肩に担ぐか大きな荷車に載せて運びます。獣道をね・・・。

で、どれくらい歩くのかと言うと、当時父は泡瀬辺りに住んでいたそうですから、そこから石川辺りまで何往復もしたそうです。

泡瀬から石川までどれくらい離れているのか分からない人がほとんどでしょうから補足しますと、最短距離を行ったとしても片道10kmはあります。それを何往復もしますから、当然日付をまたぎます。

もちろん大人たちも一緒に同行して、適度の休憩をはさみながら行ったのでしょうが、それはそれは相当な運動量であったことは、容易に想像がつくでしょう。

そんな苛酷な奴隷労働は、NEATに含まれねーだろ!

と、思われるかもしれませんが、含まれます。NEATは定義上「スポーツ以外の
全ての身体活動」のことを指し、そのなかには漁業や農業・営業周り等の「運動強度の強い肉体労働」や、洗濯物干しや近所の人とのおしゃべりなど、「運動強度の比較的弱めのもの」まで含まれます。運動強度は関係ないのです。

何が言いたいのかというと、別に「うちの父くらい体を動かせ!」と言ってるのではなく、(笑)昔の人はそれくらい「体をよく動かしていた」ということです。

そして、そういう経験をしてきている人達は、高齢になっても自分のことは自分でするし、子供や孫の助けは借りません。「体が強い」ということもありますが、「自立心が強い」のでしょう。「心」「体」も衰えていないのです。

運動強度が強い・弱いはあまり関係がなく、とにかくよく体を動かす・・・。

そこに健康長寿の秘密があるような気がします。

家族と同居の老人は、長生きできない

ところで、従来、子供や孫に囲まれた老後こそ、老人の幸せの典型とされてきた。子供との同居を夢み、定年直前なのに子供の学資や結婚式に多額の資金を費やし、老後の準備に不足に気がつかない五十歳代も多い。

ところが、長寿の大宜味村では、子や孫と同居している老人は四割弱に過ぎず、逆に南外村では九割弱が同居していた。

過半数が老人核世帯である大宜味村では、老人世帯が相互に助け合う。大部分が同居の南外村では、家族が老人を大事に、実は甘やかしてしまって、何でも家族がしてあげるという姿が見られる。

老人の自立性の違いは日常生活機能に反映し、八十歳以上の高齢者が何でも一人で出来るのは、大宜味村女性で60%、南外村では40%である。大宜味村は長寿であるだけでなく、日常生活機能も高い。

南外村に限らず、東北・北陸・中部山岳地帯は、完全な運動不足である。逆に沖縄は、冬こそよく体を動かす。一、二月はさとうきび伐採で最も多忙の時期である。

就労率にも大きな差が見られた。南外村は老人の二割が就労しているにすぎないが、大宜味村は過半数が就労している。

大宜味村に三人いる百歳老人の一人で、百二歳の女性は、夫と死別後、二十九年間一人暮らしで、掃除・洗濯・炊事のほか、芭蕉布を作る作業も続けている。

芭蕉布というのは、この村の特産品だが、芭蕉の木を切り倒して、繊維を幹から取り出し、糸に紡ぎ、染色して織物にするという一貫作業である。

村の女性のほとんどがそれに関与しているが、若いうちはまず糸紡ぎ、二十代になると織る作業に携わる。六十を過ぎると体がきつくなるので、また糸紡ぎに戻る。

この百歳老人は現在もなお糸を紡いでいるばかりか、直径五センチ以上の芭蕉の幹をナタで切ることまで自分でやる。これで月にいくらかの収入を上げているそうである。

孫が心配して休ませようとしても働くことをやめず、「税務署が来た」と言われると仕事を休むという。孫が近所に住んでいて、一緒に住もうと言ってきても断るというからすごい。

この村は芭蕉布の一貫した労働で結びついているために、仲間が夜になると集まってきて踊りを始める。その踊りを取り仕切っているのが、これまた九十七歳の女性である。

この人がまたしゃんとしたもので、この女性にかかると、七十代の老人など、まるで子ども扱いである。

また村人たちは、お互いがお互いの家を毎朝覗く。とくに超高齢者の家は、みんなが毎朝、「おはよう、大丈夫か」という調子でのぞいて、様子が変わっていないかどうかを見てあげる。

弱っていたりした場合は買い物をしてきてあげるという具合に、お互いが助け合って生活している。実に見事な生き方である。

都市部では、とても同じようには出来ないし、老人に生産活動を望むのも難しいが、毎日四キロ程度の散歩と週一~二回の屋内プールでの水泳を勧めたい。

決して怪我せず、全身の筋肉を使う水泳は、九十歳を超えてでもできるスポーツである。私の大都市老人調査では、七十歳老人の五年間の追跡で、運動をほとんどしていない老人の死亡率は、日常運動している老人の二倍以上であった。

(出典:松崎俊久『長寿世界一は沖縄 その秘密は豚肉食だった―ダイエット食は、ボケ・早死を招く』(ノン・ブック)100頁~102頁より引用)

何でも食べる、よく体を動かす・・・。スーパーご老人達に共通しているのはこの2つです。


さて、ここいらでちょっとまとめてみます。
ここまで「栄養欠乏なのに肥満や生活習慣病になってしまう2つの原因」ということで話を進めてきました。

この2つがそのまま「沖縄に生活習慣病が増えている原因」であると私は考えています。

そのうちの1つが上記で説明した「運動不足」です。特にスポーツというよりも、日常的な生活で生ずるような身体活動(NEAT)が減ってきていることが大きな原因であるように思います。

で、残りの2つ目ですが、これは次回に回そうと思います。
ちょっと長くなり過ぎたというのもありますが、次に話すことがあまりにも深刻な話なので、しっかりと分けて皆さんに伝えたかったからです。

次回が「タンパク質の冤罪シリーズ」のラストの記事になります。特に女性の方に読んでいただきたい記事です。

では、次回会いましょう!

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