「学習能力(IQ)」「運動能力」あらゆるハンディーを背負う可能性がある低体重出産児

話が少しズレた感がありますが、(苦笑)「低体重出産児は、(おそらく)一生改善されないハンデを背負っていく運命にある」ことは分かっていただけたかと思います。しかし、それは健康に関する話だけではありません。

先ほど私は「能力的に劣った未熟な人間」という差別的な言葉を使いましたが、これが決して誇張した表現でないのは、「出生体重が低いと、知能指数(IQ)や身体能力が低い傾向にある」ことがはっきりと分かっているからです。

3.知能発達

低出生体重児の認知能力に関する研究の結果では、学齢に達した超低出生体重児のIQの平均値は正期産児に比してやや低いとするものが多い

自験例の、障害を合併していない6歳児の知能検査の結果においても、IQの平均値は出生体重1,000g未満児100.4±15.2,出生体重1,000~1,499g児109.1±13.7,出生体重2,500g 以上児118.7±8.7と,出生体重が少ないほど、IQの平均値は低かった。

また、超早産児や超低出生体重児の中でも特に体重の少ない児は、遅滞(IQ70未満)、境界知能(IQ70以上、85未満)例の頻度が高く、正常知能(IQ85以上)例が約半数以上となるのは、在胎26週以上、出生体重600g以上であった。

4.身体発育

本邦の極低出生体重児の身体発育は、厚生省心身障害研究による調査結果に基づいて、板橋らにより作成された。出生体重群別の極低出生体重児発育曲線があり、1981年から1987年出生例のNICU退院後、5歳までの頭囲、10歳までの体重、身長が示されている。

出生体重750g未満児の10歳の身長・体重の平均値は日本人小児の標準身長・体重の-1SD未満,-2SD以上であった。

5.運動能力

自験例の、運動能力の測定結果では、極低出生体重児では、微細運動を苦手とする児が多い。

6.学齢期の予後

超低出生体重児は障害合併頻度が高いため、特殊教育を必要とする頻度は高い。本邦の調査では、約10%が特殊教育を受けている。明らかな神経学的障害を持たない児でも、入学後に学習障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの軽度発達障害の頻度が高いことなどが指摘されてきた。

学習障害(LD)の頻度は一般の小学生の中では約15%とされ、男児が多いことが知られているが、低出生体重児では、神経学的障害を認めない場合でも、学習障害(LD)や行動障害のリスクが高く、入学後に学習上および行動上の問題を生じる頻度が高い。

極低出生体重児の約半数が学習障害のリスクを持ち、言語能力、読書力、書字、算数、注意集中、運動のすべての分野で対照群に劣ることが報告されている。

また、精神発達が正常な学童期の超低出生体重児のうち、学習行動上にも影響する注意欠陥多動性障害(ADHD)も、一般の学童より高頻度である。

厚生科学研究によるわが国の超低出生体重児追跡調査の1990年出生児の9歳時の調査結果では、算数と体育が苦手な子どもが多かったが、社会生活能力を示す社会生活指数(SQ)約80%が85以上で、社会適応は良好であった。

7.成人期の予後

米国のHack et al.による成人期の予後の報告では、極低出生体重児のWAIS-Rによる IQは87で対照群の92に比して低値であり、IQ85以上の例の割合も少なかった。IQおよびアチ-ブメントテストの結果の対照群との差は男性で大きかった。

極低出生体重児で高校を卒業できたのは74%で、対照群の83%に比して少なく、学年を反復したものが多かった。

高校以上の教育に関しては、女性は高校以上の教育を受けているものは51%、4年生の大学に進学したのは33%で、対照群との差はなかったが、男性では高校以上の教育を受けているものは30%、4年生の大学に進学したのは16%で、対照群の各々53%、44%に比して少なかった。この教育状況の差は,知的障害があるものを除いても変わらなかった。

しかし、アルコール、マリファナ使用、犯罪歴、性行動、妊娠などの経験は極低出生体重児の方が少なかった。低身長( 3パーセンタイル未満)がVLBWの10%にみられたのに対し、対照群では 5%であった。

8.IUGR(Intra Uterine Growth Restriction)児の予後

IUGR児の予後は、IUGRの原因と影響を受けた妊娠時期により異なる点が多いが、IUGR 児に共通する予後としては、同在胎週の児と比較して、身体発育は不良であり、神経学的障害合併の頻度が高いことが報告されており、特に、頭部発育が遅延した場合には、高頻度に神経学的障害が認められている。

また、近年、IUGR児には、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、虚血性心疾患など生活習慣病発症のリスクが高いことが指摘されており、生後の急速な体重増加もそのリスクを高めるとされる

※文字装飾は管理人による

出典:レクチャーシリーズ(2);他科領域の専門家に聞く,低出生体重児の長期予後

この論文は、超低出生体重児(出生体重1,000g未満児)と極低出生体重児(出生体重1,000~1,500g未満児)の赤ちゃんのことを主に言っているので、低出生体重児(出生体重2,500g未満児)の場合は特に問題ないんじゃないか?と感じるかもしれませんが、これは「障害の程度」の問題です。

つまり、「低体重であればあるほど、障害が強く出る」ということであって、例えば出生体重2,300gで生まれ、何の障害もなく社会人になれたと表面上では見えるけども、「他人と比べて少し注意力が欠如していたり、キレやすかったり、肥満になりやすい傾向がある」ということがあり得るのです。

社会不適合者とまでは言えないけども、健常者の範囲だけども・・・、人が100努力すればいいところを、120、150くらい努力しなければならないくらいの能力差が、生まれたときからついている可能性があるのです。

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